宿便は嘘?医学的には厳密に言うと存在しない
一般的に宿便とは、「腸壁のヒダの凹凸にこびりついたヘドロのような老廃物のカス」だとイメージされていますが、これは誤りだと思ったほうが良いでしょう。腸は絶えず動くことでヒダの位置は一定ではない上に、腸壁は数日で細胞が生まれ変わり、古い細胞は外部に排出されるからです。このことから、腸壁に便や食べかすがこびりついたまま残るということは考えづらいと言えます。
実際に医師もその存在には懐疑的で、画像や写真でもその姿を確認したことはないという意見が大半です。
内視鏡検査、レントゲン検査で宿便を観察することはありませんし、腸の手術や亡くなった方の解剖をしても、腸の中に宿便がみつかったことはないそう。
つまり、特に便秘でもない場合には、腸の中に長年排出されない老廃物が残って悪影響を及ぼす心配はないと言えます。
宿便とは便秘によって腸の中に蓄積された滞留便と言える

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上述の通り、便で排出しきれず腸壁にこびりついた老廃物、という一般的なイメージの宿便は嘘と言えます。ただし、宿便を「腸内に排出されずに残っている滞留便」と定義する医師や専門家もいるらしいのです。
つまり、この定義においては、長期間宿便がある≒便秘ということ。便秘は、腹痛や食欲不振、吐き気だけでなく、自律神経の乱れによる頭痛や腸内環境の悪化による全身への悪影響も引き起こす可能性があるため、宿便を出してそれを解消する必要があると言えるでしょう。
ちなみに、とあるテレビの企画のにおいて、タレントの松本明子さんの腸のレントゲン写真には4キロもの大便が溜まっていました。これがネットニュースなどで「宿便」と表現されたのですが、松本さんは長年便秘に悩まされていたため、単純にお通じが悪かったことで、滞留便が多く存在しただけだったらしいです。
宿便に関する噂や口コミを検証

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一般的なイメージの宿便は嘘だとわかりましたが、インターネットなどで情報収集していると、「○○したら宿便が出た!」などの声がちらほら。いつもの便と出方や見た目が全く違う!ということから、普通では排泄されない宿便だと思われているようですが、実際はどうなのでしょうか。ここではよくある下記の3点について見ていきましょう。
- ①断食(ファスティング)した後に黒くて臭い宿便が出た
- ②炭パウダーを摂取したら黒い宿便が出た
- ③誰でも3~5kgの宿便が溜まっている
①断食(ファスティング)した後に黒くて臭い宿便が出た
便秘の解消法として一部で有効とされている断食(ファスティング)。ネットでもさまざまな口コミを目にしますが、「断食後に黒くて臭い宿便が出た」という声もよく目にしますが、こうした便の正体は一体何なのでしょうか?
実は、人間の便はほとんどが水分で、そこに腸内細菌の死骸や食べ物の残りかすが混ざり合って排泄されます。しかし、断食によって食べ物や水分が不足し、腸内細菌の死骸や腸の古い細胞が占める割合が多くなることで、黒い便になるケースが多いそうです。もちろんこれらは通常排泄されるものですので、黒い便が多く出たところで身体に何か良い影響があるとは言えないでしょう。
また、便秘によって腸内に便が長く滞留すると、善玉菌が減り、悪玉菌が増えることで腸内環境が悪化することで便が黒くなり、臭いもきつくなりやすくなります。
このような状態の人が、断食による悪習の一時的なリセットによって「黒くて臭い滞留便」が出たという可能性も考えられるでしょう。
②誰でも3~5kgの宿便が溜まっている?

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よく広告などで見かける「誰でも腸内に3~5kgの宿便が溜まっている」という謳い文句は、もちろん正しい情報とは言えません。先ほどご紹介した、タレントの松本明子さんのように、4kgもの滞留便を腸内に抱えていた例もあるため、あり得ないとは言い切れませんが、
「苦労して産んだ息子より重たいのが、肛門から胃の手前まで。手術が必要な危険レベルに近かったそうです」
と語っている通り、これほどの量の宿便が溜まっているのは、よほど重度の便秘の場合のみと言えるでしょう。
宿便を出して便秘を解消する方法

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腸内に長期間溜まった滞留便としての宿便は、腸内環境を悪化させ身体にさまざまな悪影響を及ぼします。ここで言う宿便を出す=便秘の解消ということですが、そのために有効といえる方法を下記の通りご紹介します。
- ①食生活を改善する
- ②運動などで腸を刺激して活動を活発にする
- ③プチ断食によって悪習をリセットする
食生活を改善する
まずは何と言っても食事の改善です。腸内環境を整えて便秘の解消に役立つとされる食事は下記の通りです。
必要な栄養 | 便秘に対してのメリット | 代表的な食品 |
水溶性食物繊維 | 便を軟らかくして腸内の通過を滑らかに | 果物・こんにゃく・海藻など |
不溶性食物繊維 | 腸の動きを活発にする | ごぼう・イモ類・大豆など |
乳酸菌・ビフィズス菌 | 善玉菌を増やして腸内環境を改善 | ヨーグルト・納豆・キムチなど |
植物油 | 腸内の便のすべりを良くする | サラダ油・オリーブオイルなど |
消化の良い炭水化物 | 腸を刺激して排便を促す | うどん・おかゆなど |
水分 | 腸を刺激して動きを活発にする | 冷水・冷たい牛乳・炭酸水など |
ただし、このような食品を多く摂ることで便秘が解消されると思うのは間違い!腸内環境を正常に保つには、栄養のバランスが何よりも大事なのです。この中で、普段の食生活で不足しているものがあったり、肉ばかり食べているなど、偏りがあれば改善してみましょう。
運動などで腸を刺激して活動を活発にする
いくら食生活を改善して、腸内環境を良くしても、腸が活動していなければ便は出ません。慢性的な便秘に悩まされている人は、排便習慣が定着していないために腸の機能が低下して、ぜん動運動が弱っている可能性が大。意識的に刺激してあげる必要があるのです。
まず、おすすめなのが、朝起きてすぐにコップ一杯の水を飲むこと。身体に朝一で腸を活動させることを覚えこませましょう。同じ理由で、朝食をしっかり摂ることも重要です。
もちろん適度な運動もやっていくとより良いです。特に腹筋が弱いと腸の動きも悪くなるため、重点的に鍛えてあげましょう。時間を見つけて、腸を刺激するための腸もみ・腸マッサージや腰をひねるストレッチなどを行うのもアリですよ。
生活習慣を見直すきっかけとしての「プチ断食」は効果的
便秘の原因の多くは、生活習慣の乱れだと言われますが、中でも食事は非常に重要な要素です。普段から、ジャンクフード中心など、糖質や脂肪が多く、野菜や果物が不足した食生活であれば、プチ断食によって悪習をリセットするのは効果的だと言えます。
ただし、完全に絶食するのは逆効果になる可能性もありおすすめできません。水分をしっかり摂取し、食物繊維の豊富な野菜や果物、スムージーなどを中心に短期間行うようにしてください。前後は消化のよいおかゆなどで回復期間をもうけるのをお忘れなく。
まとめ
一般的にイメージされている、「腸にヒダにこびりついた古い老廃物」という意味での宿便は嘘の可能性が高いです。しかし、いわゆる便秘の原因となる、長期間腸の中に滞留した便を宿便と言うのならば、その改善は健康に良い影響を与えるでしょう。
文中でご紹介したタレントの松本明子さんも、腸の中にあった4キロの宿便の排出によって、肌年齢の改善や、冷え性、食欲不振なども改善され、性格まで明るくなったと語っています。
便秘の解消には、断食(ファスティング)も一定の効果は見込めると言えますが、くれぐれも正しい方法で行うことが大切です。