LDLコレステロールが高くても中性脂肪が低い場合がある
コレステロールには悪玉と善玉があります。気にしなければならないのは、LDLコレステロールと呼ばれる悪玉のほうです。LDLコレステロールが多いと、脂肪を血管壁にくっつけて動脈硬化を促し、冠動脈疾患や脳梗塞にかかりやすくなると言われています。
中性脂肪もまた、同じく動脈硬化の因子と言われているものです。LDLコレステロールの数値が高ければ中性脂肪も高くなると思いがちですが、実はそうでない場合もあります。中性脂肪が低い理由には、どんなことが考えられるでしょうか。考えられる事柄をいくつか挙げていきますので、健康診断の結果を片手に参考にしてみてください。
栄養が足りていない場合
中性脂肪は、エネルギーの貯蔵庫のようなものと言えます。例えば十分な食事を摂らなかった場合、中性脂肪からエネルギーに変えています。しかし中性脂肪が低いと、いざというときに必要な動力を補うことができません。
このため中性脂肪が低くなると、頭痛やめまいを起こすことがあるようです。過度なダイエットを行ったことがある方は、思い当たるふしがあるはず。あまりにきつい食事制限は、中性脂肪をグッと下げることがあるので注意しましょう。
先天性のもの
日頃から健康には気をつけて、食事も運動も心がけているにもかからず、良くない数値が出ることもあります。この場合に考えられるのは、生まれ持った体質であることです。家族に似たような数値の人がいるなら、先天性の可能性はさらに高いと言えます。体質だからといって気にする必要はなく、数値に異常が出たならば医師に相談してみましょう。
肝臓病などの病気の疑いがある
腸で吸収された脂肪は、肝臓で中性脂肪に変わり皮下脂肪として貯蔵されます。ですが、中性脂肪を作る肝臓の機能に何らかの異常があった場合、中性脂肪の数値が低いことがあります。もしも先天性ではないにも関わらず数値が低いようであれば、肝臓疾患も視野に入れて医師と相談してみましょう。
LDLコレステロールが高い場合に気になること
コレステロールと言えば、「とにかく低いほうがいい」というイメージを抱いているかもしれません。しかし私たちの体の細胞膜を作り出す材料のひとつとして、脂肪の消化を促す胆汁酸やホルモンの原料の1つとして、必要不可欠なものです。
HDLコレステロールは、血液から余ったコレステロールを回収して肝臓に戻る機能を持ち、一方LDLコレステロールは、肝臓から全身へコレステロールを送り出す機能があります。LDLコレステロール値が高い場合、体にどのような影響があるのでしょうか。ここではLDLコレステロール値が高い人に起こりうる症状を、いくつか紹介していきます。
糖尿病など生活習慣病の危険性がある
コレステロール自体は体に不可欠な要素です。しかし必要以上に多くなると、余分なコレステロールが血管壁に付着してこぶのようなものを作り出します。これが動脈硬化へとつながる要因と言われています。
HDLコレステロールは余分なコレステロールを回収するので、この値が高ければ問題はないようです。しかし送り出すほうのLDLコレステロールが多いと、どんどん体内のコレステロール量が増え、こぶを生むリスクを高めてしまいます。
動脈硬化が進んだ場合、心筋梗塞や狭心症をはじめとする、血管が詰まるような病気を引き起こす可能性もあります。さらには糖尿病や肝臓疾患、高血圧、肥満などの生活習慣病につながることがあるため、注意が必要です。
家族性高コレステロール症の場合もある
食事も気をつけていて運動も行っているのに、なぜかLDLコレステロールが高い場合があります。若いときからLDLコレステロール値が高いならば、家族性高コレステロール症を疑っても良いかもしれません。
家族性高コレステロール症とは、生まれたときから血液中のLDLコレステロールが異常に増えてしまうことを言います。通常なら肝臓の表面にあるタンパク質によって取り込まれるはずのLDLコレステロールが、遺伝子の異常によって血液中に溜まってしまうのです。
LDLコレステロール値が高く、コレステロールが沈殿しやすい皮膚やアキレス腱に黄色腫がある場合、あるいは家族でLDLコレステロール値が高い人は注意してみるといいかもしれません。もしくは若年で冠動脈疾患がある人が家族にいる場合、家族性高コレステロール症の可能性があります。もし思い当たる節があるなら、医師に相談してみてください。
LDLコレステロールを下げるには
LDLコレステロールが高いと、さまざまな病気の要因になる可能性があると言われていますが、では、どうすれば高い数値を下げることができるのでしょうか。ここでは、日常でできるコレステロールを下げる方法を紹介していきます。
食生活を見直し栄養バランスの良い食事をとる
まずは日々摂取している食事を見直してみましょう。一度、自分の一日の食事を振り返ってみてください。カロリーは高くなっていないか、食事に偏りがないか、栄養バランスが取れているのかなどを確認してみると良いかもしれません。そのうえで、コレステロールの吸収を抑える食物繊維が多い食べ物を意識的に摂ります。
とは言え、こうした食事療法は長く続けることが大切です。無理が出て挫折してしまわないよう、自分に合った食事の組み合わせを工夫しながら、持続していくことを心がけましょう。
きちんと時間を合わせて一日3食摂り、3食とも少なすぎず多く食べ過ぎず、腹八分目ぐらいの量を目安に、よく噛んでゆっくりと食べます。夕食を夜遅くに食べている人は、就寝の2時間前までに済ませるように変えてみてください。
ウォーキングなどをして運動不足を解消する
運動には無酸素運動と有酸素運動がありますが、この場合は糖分をエネルギーとして消耗したあと、脂質をエネルギーに変える有酸素運動が効果的です。軽く炭水化物を摂ったあと、なおかつ食事前に行うとより効果が上がります。
有酸素運動を行って脂質をエネルギーに変えるためには、一定の時間が必要になります。そのため約30分の運動時間を目安にしましょう。できれば毎日が望ましいですが、何より継続することが最優先。週3回など、無理なく続けやすいように工夫してみましょう。
有酸素運動にはジョギングやウォーキングなどの始めやすいものから、水泳や自転車といった道具を用いたものもあります。人によって好みや得意不得意があるのは当然なので、無理をして自分に合わない運動方法を行う必要はありません。「通勤を歩きに変える」「週末にスイミングスクールへ行く」など自分に合った運動を見つけて、趣味感覚で続けられるのがベストです。
飲酒・喫煙などの生活習慣を見直す
アルコールやたばこも、コレステロール値を高める要因になると言われています。健康のためと、思い切って好きなお酒やたばこをやめられるのはとても良いことです。しかし、そうすることでもしかしたら、大きなストレスが生じるかもしれません。
ストレスのはけ口として暴飲暴食をしてしまっては無意味。長年続けてきたアルコール・たばこの習慣を止めるときには、かかりつけの医師と相談しながら、少しずつお酒の量や喫煙回数を見直してみてはいかがでしょうか。
中性脂肪の特徴を理解しよう
健康診断などで忌み嫌われる中性脂肪も、実は体にとって必要なものであることをご存じでしょうか。ここでは、そんな中性脂肪の特徴を紹介していきます。健康を見直すときのヒントにしてみてください。
中性脂肪はエネルギーの源
体内に取り込んで使われなかったエネルギーが備蓄したものが中性脂肪です。中性脂肪は肝臓で作られ、皮下脂肪として貯められていきます。腸から吸収した脂肪を溜めておき、体を動かすために必要な糖質が不足した際に、この溜めた脂肪をエネルギーに変えるのです。
つまり中性脂肪には、いざというとき体を動かす役割があります。お腹がすいて血糖が下がったときに、体の機能を維持してくれるのが中性脂肪の役割です。このほかにも溜め込んだ脂肪は皮下脂肪となり、寒いときには体温を保って寒さを和らげ、弱い内臓を強い衝撃から守る働きもしてくれます。悪者扱いされがちな中性脂肪ですが、体には必要不可欠と言えるでしょう。
中性脂肪が多いと肥満の原因になる
食べ物から取り入れた脂肪は、どんどん備蓄されていきます。運動をするなどしてエネルギーに変え、消費ができれば問題はありません。しかし運動不足だったり、アルコールの摂り過ぎや食事が高カロリーなものばかりだったりすると、中性脂肪は膨れ上がります。皮下組織として溜め込みすぎると、肥満となってしまうでしょう。
中性脂肪が低いと疲れやすく体力がない
中性脂肪の数値は高くても良くありませんが、低くても体に影響が出る場合があります。中性脂肪は体を動かすエネルギーとなる貯蓄です。エネルギーが不足したらこの貯蓄から補うはずが、貯蓄がなければ体を動かすこともできなくなります。
このところ体力がないな、疲れやすくなっているなと感じているのなら、中性脂肪が不足しているのかもしれません。特に「炭水化物ダイエット」などをしている方は要注意。最低限、体が機能するために必要な栄養素は食事から摂るように心がけましょう。
まとめ
コレステロールや中性脂肪などは、歳を取るにつれて気になる存在となります。若いころは他人事に思っていたはずが、突然自分事になりドキッとしてしまうこともあるでしょう。しかしながら、たとえ数値が良くなかったとしても、自分の体と向き合う良いきっかけとも捉えられます。
状況にもよりますが、手近なところで食事の見直しや運動を行うことでも数値は変わっていきます。まずは医師と相談しながら、自分の体に合わせた方法を取り入れてみましょう。次回の測定に向け、健康を目指してできることから始めてみてください。