じゃがいものあく抜きをする理由
完成した料理の見た目や食べたときに受ける印象、調理のしやすさへの影響を防ぐ目的があって、じゃがいものあく抜きを行います。この作業をしなかった場合はどうなるのかも含め、詳しく解説します。
変色を防止するため
見た目のきれいな料理を作りたければ、あく抜きはしたほうが良いです。というのも、じゃがいもは皮むきをしたり切ったりしてしばらくおいておくと、あくが出て赤く変色してしまいます。じゃがいもが本来持つ白い美しい色を損なわないために、あく抜きをします。
デンプン質を除去するため
じゃがいもの切り口はデンプン質です。そのため白くザラつく、炒めるなど加熱した際にそのデンプン質が糊のように作用し、じゃがいも同士がベタッとくっつきます。すると作業しにくくなったり、食感が悪くなったりします。見た目的にも良くありません。こうした不都合を避けるために、じゃがいものあく抜きを行うのです。
あく抜きしないとどうなるの?
カレーやシチュー、ポトフ、肉じゃがといった煮込み料理に関しては、あく抜きが必須なわけではありません。煮汁がたっぷりあるために、じゃがいも同士がくっつきません。また、煮込み料理は調味料の色にじゃがいもが染まります。そのために変色が気になりにくいのも、あく抜きを絶対に行わなければいけないわけではない理由のひとつです。
そのほか、あく抜きをしなかったのが良いほうに転ぶ場合もあります。たとえば、煮込み料理の煮汁中にデンプン質が溶け出すと、料理にとろみが出ます。すると、味が落ちるどころか、逆により美味しく感じることがあるのです。
なお、根野菜や山菜のあくとは違って、じゃがいものあくは摂取してなにか体に害があるわけではないです。そのため、あく抜きを忘れて料理を食べてしまったからといって、心配する必要はないでしょう。
じゃがいものあく抜き方法
たとえば山菜はあく抜きに手間がかかるために、面倒くさいと感じる方は少なくないでしょう。これに対し、じゃがいものあく抜きは楽にできてしまいます。具体的なあく抜きの仕方は、以下のとおりです。
水の中に入れるだけ
じゃがいもの調理をはじめる前に、鍋やボウルに水を張っておきましょう。そして、皮むきをしたり切ったりしたら、水にさらしてください。じゃがいものあく抜きの仕方は、たったのこれだけでOKです。なお、じゃがいものあく抜きをしているあいだ、途中での水の交換は基本的に必要ありません。
芽や緑色の部分を取るのを忘れずに!
じゃがいものあく抜きをしなくても、料理を食べたあと体に悪影響はありません。しかし、芽や皮が緑色になった部分には、ソラニンやチャコニンという天然毒素が多量に含まれているため要注意です。誤って食べてしまうと、食中毒を起こして吐き気やおう吐、腹痛や下痢、頭痛やめまいといった症状が出る恐れがあります。
皮むきをしたあと、包丁の刃元で根元を含めて芽を完全にえぐり取る
皮の緑色の部分は深めにむき、緑色になっている部分の周囲までしっかり皮をむく
じゃがいものあく抜きをするときのコツやポイント
じゃがいものあく抜きは、皮をむいたり切ったりしたあと水に入れるだけと、非常に簡単です。ただ、すぐに入れるという点に注意しなければいけません。また、水の交換はしてはいけないわけではないです。この2点の理由について見ていきましょう。
皮をむいたり切ったりしたらすぐ水に入れるのはどうして?
皮むきや切ったあとすぐ水にさらしたほうが良いのは、空気に触れる時間が長いほど変色が進み、デンプン質が出てしまうためです。とくに、じゃがいもを多く使った料理をするときは、注意が必要といえるでしょう。大量調理では、そうでない場合と比べて皮むきや切る時間がどうしても長くかかってしまうためです。
水の交換をするケースとその理由
じゃがいものあく抜きでは、水の交換は基本的に不要と述べました。ただ、水の量に対してじゃがいもの量が多いと、水がデンプンでひどく濁りやすくなります。はじめから水をたっぷり入れておけば良いのですが、濁りが凄く出た場合には例外的に、途中で1回だけ水を交換すると良いでしょう。
じゃがいものあく抜きをする最適な時間と理由
食材によっては、あく抜きに半日や一晩かけたほうが良いものもあります。一方、じゃがいものあく抜きは短時間でかまいません。ベストな時間や理由についてチェックしておきましょう。
ベストな時間は何分?
じゃがいものあく抜きは、5~10分ほどが最適な時間です。ほんの少し水に通すだけでも、あくやデンプンはかなり取り除かれます。あまり長時間つけておくとかえって良くないため、あく抜きをしているのを忘れて放っておいてしまわないように気をつけましょう。
この時間が最適とされている理由
じゃがいものあく抜きを長時間すると、水溶性の栄養素が切り口から溶け出してしまうのが理由です。たとえば、じゃがいもに多く含まれている水溶性の栄養素としては、ビタミンCがあげられます。美容や健康のために日々、十分な量を摂りたい栄養素ですが、じゃがいもを長く水につけておくほど、どんどん逃げていってしまうのです。
じゃがいもの正しい保存方法
食中毒を防ぐ意味でも、長期保存を回避するため、必要量を超えて買わないのが良いです。ただ、すぐには購入した分をすべて使いきれず、少しのあいだ保存せざるを得ないこともあるでしょう。その場合の適切な保存方法をご紹介します。
冷蔵庫で保存しない
じゃがいもの炒める・焼く・揚げる調理では、じゃがいもに含まれる糖とアミノ酸の一部が反応し、有害性のあるアクリルアミドが生成されます。じゃがいもを冷蔵庫で保存すると、糖の濃度が上昇してアクリルアミドの生成量が増加するリスクがあるのです。そのため、常温での保存が適しています。
ただ、冷蔵庫で保存したじゃがいもは、煮る・蒸す調理であればアクリルアミドが生成されにくく、甘みが出て美味しく食べられます。
涼しい環境を選び湿気対策をする
まず温度についてですが、じゃがいもは20℃以上の環境で芽が出たり、腐ったりしやすくなる性質を持っています。したがって、10℃程度の涼しい環境で保存するのが良いでしょう。
次に湿気に関してですが、多いとじゃがいもは傷んでしまいます。十分に乾かして保存するのが望ましいでしょう。保存の際にはダンボールなどに新聞紙を敷いてじゃがいもを入れると、新聞紙が湿気を調節してくれます。
日の当たらない場所に置く
じゃがいもに日が当たると緑に変色して、見た目が悪いだけでなく、かたく味も落ちてしまいます。また、天然毒素も緑色になったじゃがいもには多く含まれ危険です。そのため、じゃがいもは日の当たらない暗い場所で保存するのが適しているといえるでしょう。
まとめ
変色防止やデンプン質除去を目的に、じゃがいものあく抜きは行います。皮むきや切ってすぐ水につけ、5~10分放置すれば完了するため簡単です。水の交換も要りません。料理の見た目やじゃがいも同士のくっつき、食感への影響を気にする方は、毎回あく抜きを実践するのがおすすめです。使いきれなかったじゃがいもも、今回ご紹介した方法で保存すると良いでしょう。