【映画コラム:第1回】刹那的な少女たちの青春を描く「少女邂逅」

少女たちの青春譚を101分に閉じ込めた「少女邂逅」とは

若手映画監督・ミュージシャンの登龍門となっている映画祭MOOSICLAB2017に向けて製作された映画。映画監督枝優花は、「さよならスピカ」が早稲田映画祭りで観客賞、審査員特別賞を受賞。そんな枝監督の14歳の頃の実体験を元に「少女邂逅」は作られた。

おとぎ話のようなんだけど、確かに現実の物語

主人公、小原ミユリはいじめられていた。ミユリはいじめをきっかけに声を出すことができなくなってしまっていて、主人公であるにも関わらず、物語前半という長い間、一切声を出さない。どこかへ逃げ出したいけど逃げ出せない無力感や絶望感に苛まれリストカットを試みようとするものの、できなかった。自己主張ができない。「助けて」が言えない。

そんなミユリの唯一の心のよりどころになっていたのが、蚕の「紬」だった。誰かが私を助けてくれる−−日々のいじめに絶望しながらも、唯一の友達の蚕を心の拠り所にしていた。そんな時、ミユリのクラスに東京からの転校生がやってくる。

名前は「富田紬」。

蚕の名前と同じ名前の転校生なんて、そんなまさか。そんなおとぎ話みたいな始まり方が、絶望的だったいじめ、リストカットに葛藤するシーンのもやを晴らしてくれ、今後の明るくなるであろう展開に思いを馳せさせてくれる。

「少女邂逅」で最も美しかったシーン

枝監督は、自身のインタビューで「少女邂逅は、違う場所で生まれ育った少女たちの理想と現実と夢の邂逅」を描いたと語っている。群馬県の田舎で育った少女と、都会で生まれ育った少女は洗練されて、想像もつかない夢のような世界で生きている少女の邂逅。

「少女たちの青春」がここまで美しく映像化されたことに驚いて息を呑んだ。画面を大胆に二分割し、片方は今までと変わらない映画のカメラワーク。そしてもう片方が、iPhoneで互いを撮りあう風景。

河川敷やカフェで、写ルンですを撮り合う映像が本当に本当に美しかった。そこには確かに「思春期の少女たちの青春」が描かれていた。私は、このシーンがまさに「少女邂逅」していると感じた。

確かに現実的で普遍的で、単純な日々を切り取ったものなんだけれど、前半でのいじめのシーンや、後半での紬の衝撃の最後や、ミユリがSNSで初体験を捨てようとする生々しいシーンとは真逆のキラキラした情景が広がっていて、そのギャップにやられた方も多いのではないだろうか。

「君だけでよかった。君だけがよかった。」の意味

「学校」で悩んでいたミユリ。「家庭」で悩んでいた紬。ミユリを救ってあげた紬は、自身も救ってほしいと手を差し伸べたけど、その手は取られることがなかった。

けれど、ミユリは公衆電話のシーンでは、紬に対して、確実に「君だけでよかった。君だけがよかった。」と感じていたと思う。しかし、紬のおかげで身だしなみが変わり、周りにいる友人が増えていくうちに、ミユリの考えは変わっていく。考えが変わることは決して悪いことではない。けれど、邂逅していた少女たちが離れ離れになるきっかけには十分だった。

最初、紬は一方的にミユリに献身しているように見えるけれど、最後まで見ていると、「君だけでよかった。君だけがよかった。」と思っていたのは、紬の方なのだと気づく。

保紫萌香、モトーラ世理奈が完璧だった

ミユリを演じる保紫萌香の素朴だけれど確かな美しさ、モトーラ世理奈の深みのある少女の美しさ。映画を見た後、「配役が完璧だな」と誰もが思ったことであろう。

特にモトーラ世理奈。天真爛漫で可愛いらしさもあるんだけれど、次第に友達に囲まれてゆくミユリを独占したがって嫉妬していたり、どこか闇のある少女「富田紬」は、彼女でしか演じることができないと思ったし、私は少女邂逅をきっかけに彼女のファンになった。

映画から彼女を知った人は彼女を好きになり、彼女が好きだった人が映画を知り映画を好きになる、つまりそれは相互作用が起きているということで、そんな風になり、思えるような作品はとても貴重だと言えるだろう。

「世界で一番美味しい飲み物」のメロンソーダに世界観が濃縮されている

都会の少女紬が、ミユリに「世界一美味しい飲み物」と謳っていたのはメロンソーダ。青春、少女、都会的、可愛らしさ……この映画のそんな要素を「メロンソーダ」というアイコンが全て形容してくれている。

少女邂逅で撮影のロケ地となっていた喫茶店は「喫茶コンパル」。番外編で保紫萌香とモトーラ世理奈が阿佐ヶ谷にある喫茶店「gion」でメロンソーダ作りをしている動画も必見。

それにしても、女の子二人がかわいいものを食べている光景って、どうしてこんなにもかわいいんだろう。そんなどうしようもない、言葉に形容できないかわいさを延々と見続けることのできる少女邂逅は、絶対に見るべき映画だと断言できる。

少女邂逅と切っても切り離せない関係な、都会のメロンソーダを5選ご紹介している記事はこちら。

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実体験だからこそ描けた、少女たちの脆さや美しさ

少女邂逅 DVD

少女邂逅では『見えてるものだけが全てじゃない』ということをやりたいと話していた枝監督。衝撃のラスト以外にも、考え方で交差し揺れる二人の様子が克明に描かれている。

少女たちの脆さが描かれた映像と主題歌・劇中歌を担当する水本夏絵の透明感ある歌声が調和しているのも、この映画の世界観が好きだと思える要因の一つである。

監督が実体験を映画に投影した「少女邂逅」、監督自身と深く結びついた事象を紐解いて考えてみる楽しみ方もできるので、何度も繰り返し見るべき映画だと思う。

枝監督は、今回の映画制作に影響を及ぼした作品に「リリーシュシュのすべてから」を挙げている。少女邂逅に心を奪われた方は、ぜひそちらもチェックしてほしい。

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