高齢者のための政治「シルバーデモクラシー」
イギリス公共放送局「BBC」では、離脱派が勝った理由を8つ挙げていますが、その中には「大勢の高齢者が投票した」という考察があります。
1.「経済打撃」の警告が裏目に
2.「NHSに3億5000万ポンド」の公約が広く伝わった
3. ファラージ氏が移民問題を主要テーマにした
4. 国民が首相の言うことを聞かなくなった
5. 労働党は有権者との接点を見つけられなかった
6. 獰猛な大物2人――ボリス・ジョンソン氏とマイケル・ゴーブ氏
7. 大勢の高齢者が投票した
8. ヨーロッパはいつでも少し異質
出典:bbc.com
65歳以上の5人中3人が離脱を希望
記事内では「55歳以上の離脱支持率は他のどの年齢層よりも高かった。65歳以上になると、5人中3人が離脱を希望した。こうした要素が重なり、投票結果の下地が整ったわけだ」と解説。
グラフをみても、若者は完全に残留派、高齢者は離脱派と分かれています。
歴史を動かしたのは65+のシニア世代。18-24才との差。 pic.twitter.com/TZstC2FK7Q
— ハリー杉山 (@harrysugiyama) 2016年6月24日
@harrysugiyama @segawashin 「投票結果の下で生きなければならない平均年数」の欄が改めてくっきり。残りの人生短い人ほど社会的に短視眼になりがちなのでしょうか。
— fumi equality (@1023ananas) 2016年6月24日
つまり、高齢層が短期的な国の利益を優先したと指摘されているのです。
その後、イギリスの大手新聞社「ガーディアン」がFacebookページに投稿したビデオも反響を呼びます。
ビデオではEU圏内を自由に移動できる未来を失われたイギリスの若者が嘆き、その悲壮感が漂っています。
「国の未来に恐怖を感じる」「16-17歳の声は聞いてすらもらえない」
また、ガーディアン紙の記事にも「将来、イギリスにいるイメージがない(移住や国籍を変える)」「私の未来、私の友人の未来が消えていった」といったコメントが見受けられます。
一方、この年齢層の違いをみた日本ではツイッターを中心に「大阪都構想を思い出した」という声があがりはじめます。
2015年5月に行われた大阪都構想では、都構想反対派が僅かに上回りました。
20代〜60代の「都構想賛成」が過半数で、70代以上は都構想反対派が優勢。
しかし、結果として高齢者の意見が通ってしまう現状が選挙後に指摘されました。
こちらの世論調査を見ても、高齢者ほどEUからの離脱の割合が高いね。
大阪都構想の結果を見ても、相対的に人口が多い高齢者の民意がそのまま結果に表れているから、もっと若者が選挙や住民投票に行かないとダメだね。
ーイギリス国民投票 pic.twitter.com/nLvCA3Ru9Y— ゆうちゃん (@yuta12017) 2016年6月24日
これを老人のための政治「シルバーデモクラシー」と呼ぶように。
老人の数が多く、若者の数は少ない。その上、投票率も老人のほうが多いために老人の意見が通りやすくなる。これが「シルバーデモクラシー」の正体です。
@photoholicsjp 大阪都構想も20代と60代以降で票が真逆だったのを思い出しました(>_<)
— りそな (@blue_reason) 2016年6月27日
しかしEU離脱の国民投票と大阪都構想の住民投票って結果がそっくりだよな
— まーとん (@mattmurton9) 2016年6月27日
日本と違って投票率は高かった筈なのに若者の意志が通らなかったのは残念
(独立派の若者がいるのはわかってるけどね) https://t.co/89BMHb62vc— akaneiro/くらくさ (@kura_kusa) 2016年6月24日
「シルバーデモクラシー」も民主主義の結果であり、尊重しなければなりませんが、イギリスの若者には英国国民であると同時にEUの一員という意識があります。
その一方、EUに加盟する前のイギリスを知っている年齢層は「偉大なるイギリス」だった時代を懐かしみ、イギリスは独立してもやっていける、と考えている方が多かったのです。
動かしたのは老人、向き合っていくのは若者
今回の選挙では「EUにイギリスの富・力が吸い取られていると憎しみすら感じている」と、不愉快さを示した意見も。
移民の件も含めて、取り急ぎ「現状が嫌だ」の拒絶反応が投票に反映されたのではないでしょうか。
国民投票後のイギリスをより長く生きていくのは老人ではなく若者たち。
まだ、EU離脱までには時間がありますが、はやくも「老人が混乱を引き起こし、若者がその混乱を立て直さなければならない」と、指摘され始めています。
元イングランド代表の主将デイビッド・ベッカムさんも投票前は「残留」への支持を表明していました。その理由についても「現役時代、欧州の選手達と戦ったことで、自身もイングランド代表チームも成長できた」と、経験を振り返りながらヨーロッパと繋がる未来の大切さを説明。しかし、願いが聞き届くことはありませんでした。