自己実現欲求とは?
自己実現欲求とは、そもそもどういう意味なのでしょうか?自己実現と聞くと、なんだか難しい話のように聞こえますが、実はすごく単純なことなのです。まずは自己実現欲求の本来の意味を具体的にご紹介します。
人間は自己実現に向かって成長する欲求を持っているという意味
人はさまざまな欲求を持っていますが、全ての欲求が最終的に自己実現することに繋がると言われています。
自分のやりたいことや目標に向かって努力をして、技術や能力を習得したいという欲求はもちろんですが、毎日食事や睡眠を摂ったり、人と関わったりといった生活しているうえで基本的な欲求も、自己実現に向かって成長する欲求なのです。
アメリカの心理学者「アブラハム・マズロー」が定義した言葉
「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」という言葉を残したのが、アメリカの心理学者であるアブラハム・マズローです。
自己実現欲求は、マズローなしでは語ることはできません。マズローは自己実現欲求だけでなく、自己実現に向かって成長するための欲求についても深く研究し、提唱しています。
現代日本においては自分らしく生きる欲求のこと
近年日本では、就職活動などで「自己実現」という言葉がよく使われるようになりました。また、自己啓発の本やセミナーでも自己実現については多く語られています。
自己実現についてはさまざまな表し方がありますが、現代日本で使われる自己実現とは、簡単に言うと「自分らしく生きること」を指しています。
マズローが定義する欲求5段階説とは
アブラハム・マズローは、人間が持っている欲求を5段階に分け、頂点を自己実現欲求としてピラミッド型に示しました。その頂点に至るまで、ピラミッドの下の段の欲求から詳しくご紹介していきます。
1.生存欲求
人が生命を維持するための欲求です。食事や睡眠、排泄など、人が生きていくうえで欠かせないもののことを指します。人が極端にいろいろなものを失ってしまい、最低限の生活しかできなくなってしまったとき、生存欲求がどの欲求よりも働きます。
ただ、この欲求しかなくなってしまうのは一般的ではありません。一般的な人は、生存欲求のあとすぐに、次の安全欲求が出てきます。
2.安全欲求
生活するうえでの安全性や、経済的安全性、また良好な健康状態を維持することなど、より良い暮らしをするための欲求です。最低限の生活をすることを保障した生活保護制度や、生活するために雇用に関する社会的制度、病気や不慮の事故に対するセーフティーネットも、安全欲求を満たす要因になります。
生存欲求と安全欲求は、食料や暮らすための家など、具体的なものが必要な欲求です。そのため、物質的欲求と言われています。
3.社会的欲求
自分が社会に認められたいという欲求です。職場できちんと自分の役割があったり、人間関係に置いて自分が受け入れられていると感じたりすると満たされます。
そのため、職場で自分が必要じゃないと感じたり、友人など普段接する人がいなかったりすると孤独感や社会的不安を感じます。
4.承認欲求
周囲に自分は価値のある人間だと認められ、尊重されたいという欲求です。最低限の承認欲求は、他人に尊敬されることや、地位や名声、利権、注目を得ることで満たされます。
承認欲求のレベルが高くなると、自分を尊重し、自分のために技術や能力を習得すること、また自立することで見らされるのです。他人からではなく、自分で自分をどう評価するかが重視されます。
マズローは、自分を認めてあげる高いレベルの承認欲求を持つことが大切だと述べています。
5.自己実現欲求
生存欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求が満たされても、人間は自分に適している、自分らしいことをしない限り不満が生じる生き物です。自己表現欲求は、自分が持っている技術や能力を最大限に活かして行動し、自分にしかできないことをして、自分らしく生きたいという欲求を指します。
生活しているうえで行う全ての行動の動機が、この欲求に繋がります。
自己実現をするのに必要な要素
マズローが定義している5つの欲求を全て満たしている人は、共通の要素を持っています。日ごろどのような考えで行動をしているのか、具体的な要素をご紹介します。
自己実現をしたいけど、今の自分には何が足りていないのか、考えてみましょう。
先入観を取っ払って物事を見ることができる
物事を見るとき、人は知らず知らずのうちに過去の経験から先入観を持ってしまいます。ときにその先入観が、物事の正しい形を捉えることを邪魔してしまうのです。
例えば人の話を聞くとき、先入観による思い込みで勘違いや早とちりをしてしまうことがあります。先入観を取っ払って、「知らない」というスタンスで聞くと、相手の話を自然に受け入れることができ、新たな発見が見つかるかもしれません。それが自分の経験となり、自己実現に繋がっていくのです。
判断するときには感情を捨て客観的に判断することができる
生きているうえで、何かを判断しなければいけない場面がたくさん出てきます。自己実現するためには、判断するときは自分の感情を捨て、その物事を客観的に見ることが大切です。感情的になると、どうしても自己中心的になってしまいます。
しかし客観的になることで大切なことが見え、問題を中心に考えることができるのです。そのため、正しい判断ができるようになっていきます。
孤独を楽しむ心の余裕がある
自己実現している人は、孤独を楽しむことができます。人は孤独を感じると不安になるものですが、自己実現できる人というのは独りになったり傷ついたりしても不安になりません。
また、日常生活で問題や心配事があった場合や、大きな仕事を任されていて責任重大なときでも、睡眠や食事は満足に摂ることができ、笑顔を保つこともできます。プライバシーを大切にしたいという欲求があるからです。
孤独を楽しみながらも人間関係もしっかりと楽しむことができる
自己実現できる人は孤独を楽しむことができますが、人間関係もしっかり築いて社会的欲求を満たしています。なぜなら、広い心を持ち、周囲の人を愛して自然と溶け込むことができるからです。
周囲の人のことを同一視して、自我の境界線を取っ払うことができます。そのため、周囲の人と深い人間関係を築くことができるのです。
自分の幸せと同じように他人の幸せを大事にすることができる
いくら周囲と良い人間関係を築いていたって、ときにはいらだったり怒ったりすることもあるでしょう。しかし自己実現できる人は、周囲の人に対してとても親切で忍耐強いです。
そのため常に相手の気持ちを考えることができ、いつも相手を助けてあげようと考えています。そして相手の幸せは、自分の幸せのように喜ぶことができるのです。
失敗を恐れずリスクを楽しむことができる
自己実現できる人は、失敗を恐れません。失敗してしまったとしても、その失敗を糧にして次にチャレンジします。何事もリスクを楽しんで行動することができるのです。
そのリスクを楽しみながらも挑戦していくことで、さまざまな技術や能力を習得し、自分にしかできないことや自分らしい生き方を見つけていきます。
自分の価値観を大事にすることができる
人は高い承認欲求を持つことで、自分自身を好きになり、自分を信じることができます。そのため自分の考えや価値観に自信を持ち、大事にすることができるのです。
そしてその価値観に従って行動して目標を達成し、周囲からも褒められたとき、喜びは倍増します。自分の価値観を大事にして行動することは、人生を楽しくしてくれるでしょう。
他人の価値観も尊重することができる
自己実現できる人は、他人の価値観がたとえ自分と違うものでも尊重することができます。それは、自分を認めて自分の価値観を大事にしているからです。
自分を認めてあげていないと、違った価値観を持った人の意見を聞いたとき、「どうして?」と批判的になってしまいます。しかし自分を認めてあげていれば心に余裕が生まれ、違う価値観の意見を聞いても「そういう考えもあるのだな」と素直に受け入れることができるのです。
大多数と意見が違っても臆することなく進むことができる
いろいろな考えの人がいますから、いつも周囲と意見が合うとは限りません。また、大多数の人が同じ意見でも、自分だけ意見が違うということもあるでしょう。そんなとき、自分の意見は捨てて大多数の意見に混ざってしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし自己実現ができる人は自分の意見が大多数と違っても、その意見に至るまでの自分の考えを信じ、従って進むことができるのです。
自己実現欲求のメリット
自分らしく生き、自分にしかできないことをして自己実現欲求を満たせる人は、人生においてやはりメリットが多いです。どんなメリットがあるのか、具体的にご紹介します。
自分らしい人生を送ることができるので後悔が少ない
自分を認めてあげて、自分自身を愛し、自分にしかできない生き方や自分らしい人生を送ることで、年齢を重ねたときに、後悔が少なくなります。自分を認めずに、やりたいことを我慢すると、自己実現欲求が満たされないため「あのときもっと行動していればよかった」と後悔することが増えてしまうでしょう。
楽しく悔いのない人生を送るためには、自分を大切にして自己実現欲求を持つことがとても大切なのです。
自分の決めた道なのでやりがいがありエネルギッシュに行動できる
自分が信じた道を進むことは、落ち込むことがあっても達成感の方が強く、非常にやりがいを感じることができます。そのため、自然とやる気に満ち溢れて、てきぱきとエネルギッシュに行動することができるのです。
やりたいことを実現し自分らしく生きるには、行動力がとても大切です。自己実現欲求を持つことでその行動力が自然とついてきます。
大変なことは多いけど理不尽なことは少なくストレスが少ない
自分のやりたいことをやるというのは、楽しいことばかりではありません。大きなリスクが伴うこともありますし、苦しいこともあるでしょう。
しかし、やりたくないことをやるよりも、理不尽なことは少なくなります。そのため、どんなに大変でもストレスを感じることは少なくなるのです。ストレスが少ないことで精神的にも安定し、生活を豊かにしてくれます。
まとめ
「自己実現」と聞くとすごく漠然としていて、莫大なことのように感じますが、マズローの欲求5段階説に従っていくと、自己実現欲求を持って自己実現への道を開きやすくなります。
まずは生活の基盤をしっかりと立てて生存欲求と安全欲求を満たし、それから社会的欲求や承認欲求を持って自分を認めてあげることが大切です。すると自然と、自己表現欲求を持つことができ、人生をより豊かにしてくれるでしょう。