記憶力がないと感じる人によくある原因
基本的に記憶力が生まれつき悪かったり、加齢とともに記憶力が低下したりすることはありません。何らかの原因によって記憶することが阻害されているのです。記憶力がないと感じている人に共通してみられる原因にはどんなものがあるのでしょうか。
過度のストレス
過度のストレス状態が継続すると記憶力が低下することがあります。ストレスを受けるとストレスホルモンの一種である「コルチゾール」が増加して体を防御しようとします。しかし、長期間にわたってコルチゾールが増え続けることによって、記憶をつかさどる脳の海馬を委縮させてしまうと言われています。
学校や職場、人間関係など、ストレスが全くない状態にすることは難しいものです。上手にストレス発散をしながら溜めすぎないことが記憶力の低下防止にもつながります。
睡眠不足
睡眠時間が足りないと頭がぼーっとした状態になることは誰もが経験したことがあることではないでしょうか。頭がスッキリとしていない状態で新しいことを覚えたり、昔の記憶を呼び戻したりすることは難しいものです。
睡眠不足は体に大きなダメージを与えているので、無理をしないようしっかり睡眠をとることが必要です。
食生活の悪化
多忙や偏食を理由としてバランスの良い食生活が送れないことも記憶力を低下させる原因となります。記憶力をアップするために必要な栄養素にはさまざまなものがあります。例えば、ミネラルの一種である亜鉛も記憶力に大きく関係する栄養素です。
そのほか、レシチンやDHAなど記憶に関係する栄養素は数多くあり、バランスの良い食事を摂取することで記憶力をアップすることも可能です。
夜型の生活
最近では朝活が流行りですが、昔から夜型の生活が変えられない人もいるでしょう。夜型で受験勉強をした人も多いでしょうが、よく考えてみると実情に沿ったものとは言えません。試験や仕事は一般的に朝からあるもので、その時間に最も脳が活性化できるように備えておく必要があります。
夜型の生活をしていると睡眠時間が不足するだけでなく、脳をフル回転しなくてはならない時間帯に活性化できないので記憶力が低下することが考えらます。
記憶力を低下させる理由
記憶力は年齢ではなく日頃の習慣や記憶の仕方に誤りがあることによって低下すると言えます。記憶力を向上させるための方法がある一方で、記憶力を低下させてしまう理由もあります。どんなことに気を付ければいいのでしょうか。
頭で覚えようとせずに直ぐにメモをする
記憶力に自信がない人に多いのが、何でもすぐにメモをすることです。大切な約束の時間や場所、目的などをメモすることによって、記憶しているかのような錯覚が生まれます。
また、メモをしている時点で「書き残したたから大丈夫」と記憶することを拒否している可能性もあります。メモ魔の人は一方で頭で覚えようとせず物に頼ってしまっているため、記憶力が低下することがあると言えるでしょう。
ただし、後で読み返していたりすると記憶力に向上に役立ちますし、アイデアを忘れないようにメモすることもあるので、うまく活用することができる人にとってはメモはおすすめですよね。
思い出そうとせずにすぐに検索する
忘れたからといってすぐにスマホやパソコンで検索して調べる人も多いように、考えることを放棄して物に頼ってしまう傾向があります。
忘れかけたと思っているときに思い出すことによって脳は活性化され記憶力がアップするものです。いつも機器を頼って検索していると「覚えていなければならない」「忘れてはならない」切迫感がなくなり、記憶が抜け落ちてしまう原因となります。
毎日同じことの繰り返しをしている
毎日同じ習慣や作業を繰り返すルーティーンワークは、体が覚えているので頭で思考することがないままスムーズにできます。作業をするのは楽ですが、脳に刺激が与えられないため脳の活性化は期待できません。作業中に別なことを考えていても支障がないことも多いでしょう。
脳は未知のことに出会うと活性化され、問題を解決するために過去の記憶を検索します。同じことを繰り返してばかりの毎日では、脳は休眠状態となり徐々に記憶力が低下していくものと考えられます。
復習しない
そもそも人間は忘れる動物であり、時間が経過するにしたがって記憶が薄れるのは当然のことであると言えます。だからこそ、何度も繰り返して復習することによって学習し同じ過ちを繰り返すことがなかったり、既知の知識で問題を解決しようとしたりできるのです。
一旦覚えたものを思い出す作業は、時間が経過すればするほど手間暇や時間を必要とします。ちょっとした隙間時間を使ってでも復習することを習慣としていない人は、記憶力が低下する傾向があると言われます。
記憶力をアップさせる考え方のコツ
記憶力が低下していると感じた場合、何もせずに放置するとさらに記憶力が悪くなってしまうことがあります。その一方で、記憶の仕方に工夫をすることによって記憶力を向上させることも可能です。記憶力をアップさせる考え方にはどんなコツがあるのでしょうか。
「ながら」勉強をしない
音楽を聞いたりテレビや動画を見たりしながら「ながら勉強」をしていないでしょうか。なかには、シーンとした状態で集中して勉強することが苦手な人もいるでしょう。脳には安定や一貫性を求める性質があります。相互に矛盾する情報や無関係な情報が同時にインプットされると情報同士が干渉しあって、記憶力が低下してしまいます。
ながら勉強を何時間もするよりも集中して短時間勉強した方が効率よく記憶できます。少しずつでもいいのでながら勉強からの脱却を図りましょう。
頭の中でストーリーを作る
効率よく記憶するために、例えば歴史年表であれば「鳴くよ(794年)ウグイス、平安京」などと語呂合わせで覚えることがあります。記憶力がいいとされる人が同時に複数の物の絵を見て、全ての物の名前を言い当てる場面を見たことがある人もいるでしょう。この場合は、単品としてとらえて記憶するのではありません。
例えば熊のぬいぐるみ、帽子、りんごの絵があれば「帽子をかぶった熊がりんごを食べていた」と頭の中でストーリーを作ることによって記憶力をアップさせることができます。
記憶力がある人に多い生活習慣と特徴
「記憶力がある」「記憶力が良い」と言われる人のなかには、生まれつきではなく努力によって記憶力をアップさせている人もいます。記憶力がある人に多くみられる生活習慣や特徴にはどんなものがあるのでしょうか。
DHAやレシチンなどを摂取する
記憶力がある人のなかには食生活に気を配っている人も少なくありません。栄養バランスのとれた食事を心がけるだけでなく、脳に良いといわれている栄養素を積極的に摂取しています。
青魚を食べると頭がよくなると言われますが、これは青魚に脳内の血流改善や神経ネットワークの形成に働きかけてくれるDHAが豊富に含まれているからです。また、大豆に含まれるレシチンは脳の細胞間脂質を形成する材料となります。大豆を発酵させた納豆には「ナットウキナーゼ」が豊富で脳内の血流を良くしてくれる働きが期待できます。
定期的に体を動かす
机の上で勉強してばかりいても記憶力をアップすることはできません。記憶力低下の原因の1つにストレスがあります。定期的に体を動かすことによってストレス発散ができ、リフレッシュして新たな情報を脳にインプットすることも可能となります。
度忘れしてしまったことを思い出すために体を揺すったり、手を動かしたりすることがあるように、体を動かしながら記憶すると効果が上がるとも言われています。短時間で効果的な運動を定期的に行うようにすると記憶力をアップすることができるでしょう。
1日8時間以上しっかりと寝る
記憶力をアップさせるためには十分な睡眠時間の確保が必須であり、1日8時間以上しっかりと寝るのが理想です。
記憶したと思っていることは短期記憶として残っているだけで、睡眠をとることで整理され長期記憶として定着します。記憶の整理や定着には深い眠りである「ノンレム睡眠」が必要です。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠が繰り返されるものであることから、なるべく長時間の睡眠が必要なのです。
ストレスは解消する
ストレスを感じると脳はストレスに対抗するためのホルモン分泌などの指令を行うことに忙しくなります。覚えたり復習したりする余裕がなくなるため記憶力が低下してしまうと言われています。また、ストレスによって質の良い睡眠が阻害されることにもなるでしょう。
学んだことは誰かに話す
学習したり記憶したりしたことを誰かに話すことによって記憶力をアップすることができます。人に話すためには頭のなかで整理、要約する作業が必要となります。また、わかりやすく説明するには、話の筋道や内容の整合性についても考えなければなりません。
話した内容について質問を受けることによって自分の記憶を整理しながら確認することもできるでしょう。人に話すことによって、自分自身の記憶を強化することにつながります。
新しいことに興味を持つ
脳は刺激を受けることによって活性化されます。経験や学習から得た知識で解決できる問題ではそれほど脳は使われません。しかし、新しいことに出会うと興奮状態となり、脳が活性化されて記憶力のアップが期待できます。
実際に何かを始めなくても新しいことに興味を持ち、想いを巡らせるだけでも脳は活性化されます。ご長寿で頭もしっかりしている人は、好奇心旺盛で新しいことへの興味関心も高いのも納得できるのではないでしょうか。
記憶力がある人に多い勉強法
記憶力がある人は、もともと記憶力に秀でているのではなく記憶力を高めるための勉強法に工夫ができる人と言えます。記憶力が良いとされる人が積極的に取り入れている勉強法にはどんなものがあるのでしょうか。
DWM法を試す
記憶力がある人が積極的に取り入れている勉強法にDWA法があります。Dは翌日、Wは一週間後、Mは一ヵ月後を意味します。それぞれのタイミングで学習することによって、記憶を強化し長期記憶として定着を図る勉強法です。人は忘れる動物であり、暗記したと思っても20分後には約42%、1時間後には約半分、翌日には約74%を忘れてしまうと言われています。
DWM勉強法を取り入れて復習することによって、忘れてしまう割合を減少することが可能となります。
寝る1~2時間前に勉強する
記憶力がある人は勉強後に余暇を過ごすのではなく、就寝1~2時間前に勉強することが多いと言われています。睡眠中に短期記憶が整理・定着されますが、眠る1~2時間前は物事を記憶するのに最適なゴールデンタイムとされています。
眠っている間に記憶が定着することを「レミセンス効果」と言います。この効果を最大限に活用するためには、例えば英単語であれば1時間かけて30個覚えるのではなく、短時間で300個をざっと眺めた方が効果が期待できるでしょう。
覚えたいことを声に出して紙に書く
記憶は目や耳に入ってくるものを脳にインプットするイメージがありますが、それは短期的なもので時間とともに忘れていくものです。しかし、このときに覚えたいことを声に出す、文字にして紙に書く作業をプラスするとインプットとアウトプットを同時に行うことができ、記憶の定着につながります。
また、紙に書くことで大事な要点を整理しながら書くことができるため、記憶力のアップに効果があります。ポイントのみを声に出したり紙に書いたりすることで、全体像を把握して記憶することが可能となるでしょう。
勉強に遊びの要素を取り入れる
「勉強しなければならない」「覚えなくてはならない」などと思うことは大きなストレスとなり、記憶を阻害することも考えられます。子供が遊びのなかから多くのことを学ぶように、勉強に遊びの要素を取り入れることで記憶力をアップすることができるでしょう。
英才教育の一環としても取り入れられていますが、フラッシュカードに書かれた単語を目にも留まらないようなスピードでめくっていく学習法があります。遊び感覚で好奇心をもって勉強に臨むことができ、記憶力アップにもつながります。また、英語を勉強する際に好きな映画のセリフから入るなども効果的です。
繰り返し同じことを勉強する
記憶を強化する最適な方法は繰り返し同じことを復習することです。一度で覚えようとしても時間とともに必ず忘れます。忘れることを想定して、覚えるのではなく忘れたことを繰り返し勉強して復習によって記憶を強化することの方が効果が期待できます。
勉強の後にテストがあるのは、記憶を確認するためのもので、間違えたことや覚えていないことを繰り返し勉強するためのものです。
まとめ
生まれつき極端に記憶力がある人とない人がいるわけではありません。日頃の生活習慣や食事、効果的な勉強法を取り入れることで誰でも記憶力を向上することができます。記憶力がないと思っている人は、記憶のメカニズムを理解し、記憶力の向上に適した環境や方法を取り入れてみましょう。