オレグ・ベルニャエフ「内村航平は世界で1番クールな人間」
Did you agree with Oleg Verniaiev's high bar score? #ArtisticGymnastics pic.twitter.com/hmLBnMsQjI
— NBC Olympics (@NBCOlympics) 2016年8月10日
メダリスト3人が並んだ公式会見では、一人の男性記者から内村選手に少し皮肉的な質問が投げかけられました。
「ミスター・ウチムラ、あなたは審判に好かれているから良い得点が取れると感じていますか?」
一瞬、怪訝な表情を浮かべた内村選手は、「僕が審判に気に入られてるってことですよね?」「ジャッジ(採点)は公平だと思う」と返します。
すると、死闘を繰り広げたオレグ・ベルニャエフ選手(ウクライナ)が次のように割って入ります。
「審判も個人のフィーリングは持っているだろうが、スコアに対してはフェアで神聖なもの。航平さんはキャリアの中でいつも高い得点をとっている。それは無駄な質問だ」と言い放った。
出典:daily.co.jp
「大変素晴らしい。彼は皆のお手本です。今日の最後の鉄棒は言葉がない。クレイジーとしかいえない」(ウィットロック)、「航平さんを一生懸命追っているが簡単じゃない。この伝説の人間と一緒に競い合えていることが嬉しい。世界で1番クールな人間だよ」(ベルニャエフ)
出典:daily.co.jp
3位マックス・ウィットロック選手(イギリス)もベルニャエフ選手も内村選手の最終演技を絶賛。選手だからこそ理解している内村選手の偉大さ。まさかの展開に内村選手は照れ笑いを浮かべました。
記者会見は #内村航平 選手とベルニアイエフ選手の褒め合い。リップサービスではなく、本音だというのが伝わってきました。写真は会見後の記念撮影。 #体操 #男子個人総合 #リオ五輪 pic.twitter.com/DjieGSjTiJ
— 金島淑華 (@kimsukhwa819) 2016年8月11日
しかし、ウクライナ出身の苦労人オレグ・ベルニャエフ選手(22歳)にはどうしても勝たなければいけない理由があったのです。
オレグ・ベルニャエフ、祖国ウクライナへの想い…どうしても五輪で勝ちたかった過去
銀メダリスト オレグ・ベルニャエフ選手(ウクライナ ドネツク出身)は2014年11月に出場した世界選手権ドイツ大会以降、すべて優勝している伸び盛りの22歳。プロフィール上の情報によると、1993年生まれ。身長161cm。体重55kg。
しかし、分裂状態が続く祖国ウクライナからの支援は一切ない苦労人。古い器具、怪我のリスクと隣り合わせの床といった劣悪な練習環境、支給される給料も月あたり約1万円という状況が続く中、強い決意でオリンピックに出場していたのです。
ベルニャエフ選手は、国から支援ほとんどなくて、練習場所も壊れてるとこばっかで、普段の練習は、ケガしないように練習してたらしい
故郷は戦地で、親とも会えんくて、でも母国で練習続けて、それで内村と争って、内村に勝っててもおかしなかった pic.twitter.com/uwz5zg1K67
— 麟太郎 (@SlimShady125) 2016年8月10日
ウクライナのアスリートがロシアやアゼルバイジャンなどに国籍を変えて可能性を探る中、オレグ・ベルニャエフ選手にも好条件のオファーが届きます。しかし、彼は母国に残ることを決めました。理由は、母国には家族・親戚・友達がいるから。
「内村は神話的な選手。でも、僕の目標はシンプル、彼と戦うことさ」と、昨年放送された日本のスポーツニュース番組の取材で語っています。
Oleg Verniaiev the REAL CHAMPION pic.twitter.com/bcCiT5pm6d
— Francisco Morteo (@Franciscomorteo) 2016年8月10日
ウクライナチームは、勝利を諦めていた団体戦ではオレグ・ベルニャエフ選手を2種目しか起用せず、この個人総合のために体力を温存させていました。祖国の誇りを懸けて戦っていただけに、ラスト一種目での逆転は悔しかったはず。
それでも内村選手への尊敬の念は一切変わりませんでした。結果が出た後は内村選手とハグ。2人のライバル関係を象徴する、これぞオリンピックの光景でした。
【DAY6】最後に僅差でベルニャエフ選手をかわし、連覇を達成した内村航平選手。「体操の面白さとか難しさとかを今日で伝えられたと思うので、勝ち負けよりも、今日はそれがすごく良かった」#がんばれニッポン #体操 #Rio2016 pic.twitter.com/mLkaiuWElP
— 日本オリンピック委員会(JOC) (@Japan_Olympic) 2016年8月11日
この内村航平選手の良きライバルはまだ22歳。4年後の東京五輪では、さらにパワーアップする「オレグ・ベルニャエフ」に注目せずにはいられません。
※ベルニャエフの演技動画