映画『海辺の生と死』とは
満島ひかりさんが『夏の終り』以来4年ぶりとなる単独主演を務めた『海辺の生と死』は、太平洋戦争末期に出会った島尾ミホさんと島尾敏雄さん夫婦をモデルにした恋物語を実写映画化した作品(公開は7月29日)。メガホンをとったのは『ゲゲゲの女房』『海のふた』『白河夜船』などを手がけた越川道夫監督。
撮影:FEELY(テアトル新宿にて)
沖縄県奄美群島の加計呂麻島(かけろまじま)で撮影を行い、奄美大島にルーツを持つ満島ひかりさんが島唄を歌ったことでも話題に。カゲロウ島で生まれ育った国民学校の代用教員・トエ役を演じた満島ひかりさんの相手となる海軍特攻艇隊隊長・朔(サク)中尉役を永山絢斗さんが務めました。
撮影:FEELY(テアトル新宿にて)
撮影:FEELY
満島ひかりの起用について
越川道夫監督は満島ひかりさんとの本格的な出会いは映画『夏の終り』(2013年)と語り、プロデューサーを務めていた当時から『海辺の生と死』の話をしていたと明かし、「自分の妄想に過ぎなかった映画(の構想)が、満島ひかりさんという女優でしか考えられないような形で具体化していったんだろうな…」と過去をたどります。
撮影:FEELY(テアトル新宿にて)
ルーツ奄美大島に立ち返る 都会との違い
“私の中に奄美大島の血がある”と語る満島ひかりさん。越川監督の話を受け、「20代最後に、自分の中になにか眠っているものを出せる映画はないか」と模索していた時期があったと打ち明けます。加計呂麻島が舞台のモデルとなった『海辺の生と死』の出演には「ふだんとは違うようなことになるんじゃないか」と自身に期待を込め、撮影に臨んだそう。
撮影:FEELY
また、都会と奄美で芝居することの違いについてトークが及ぶと、「東京弁で芝居をしていると、どこかウソっぽいんですよ。方言の人なのでもともと」と違和感があることを明かし、「つくっているところが、少しだけ膜が張っているところがあって、この膜を、もっと取り払えるんじゃないか!と期待して」と、当時の心境を思いめぐらすように振り返りました。
理を超える「奄美」の不思議な魅力
撮影:FEELY
安藤紘平さんが「“トエ”の話ではなくて、“ひかり”の話」「演じているのも変な感じがするくらい」と映画の感想を述べると、越川道夫監督は「ひとりの人間というより、島と溶け出しちゃう感じがするんですよ。あそこにいると」「島のことを知っている満島さんにとっては、もっとそうだったんじゃないかと」と、役者が島に同化していく不思議な現象があったと話します。
写真:PIXTA
撮影:FEELY
「そうですね」と、満島さんも同調。都会のエピソードを引き合いにしながら、本作で感じた気持ちの変化を語ります。
撮影が東京の場合、辛いことがあるとスタッフから『ミツシマ。空を見上げろ! 空は裏切らないぞ!』と励まされ、自然を味方につけて撮影に挑むことがあるそう。
しかし、自然だらけの奄美では「あまりに大きな自然に吸収されそうになって。おかしいことになってるんじゃないかとか。こんなのカメラの前で演じていいのだろうか?っていう感性がどんどん出てくる」と、誘い込まれていく感覚を口にしました。
芝居中のほうが素の自分かもしれない
撮影:FEELY
ラストは観覧者からの質問コーナーへ。芝居に入り込む自分と素の自分を切り分けるコツについて問われると、芝居時に日常から離脱することはないと、冷静に自らを客観視した回答を披露。
「私は、お芝居の時間と素の時間の切り分けっていうのがそんなにない。例えば、ご飯を食べている自分とトイレにいる自分って違う自分だし。そういう考え方をしている」
「わりと映画の画面にいる時間の瞬間のほうが、もしかしたら素なのかもしれないと。ふだん生きている社会のマニュアルとか規則に従って、『車が走っているから道の真ん中を歩いてはいけない』とか我慢している自分のほうがお芝居がかっているのかなと」
撮影:FEELY
作品の撮影が終わると「なにをやっていたのかわからないくらい信じられないくらい疲れることがあります」と一心不乱に打ち込み、燃焼し尽くした時の現象を話し、「(エネルギーを使いすぎて)太ることができない」「太った役とかやりたい。グラマーの女の人になってみたいけど悩みです」と、会場の笑いを誘いました。
撮影:FEELY
トークイベント写真
撮影:FEELY
撮影:FEELY
撮影:FEELY
撮影:FEELY
撮影:FEELY
撮影:FEELY
撮影:FEELY
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